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私の罪・妻の功 2 (山城)

[8960] 私の罪・妻の功 2 山城 投稿日:2006/02/16 (木) 03:05
翌日、妻は前日叔父から受け取った金の振込みに朝から出ていました。
私は会社で相変わらずの残務処理に追われ、時間はお昼を回っていました。
妻の仕事も一息つく頃だろうと思って、昼飯に誘うために携帯を鳴らしました。妻はすぐに携帯に出て、振込みが終わったと、少し声をはずませています。
妻も毎日気苦労が耐えず、そんな風に「かわいいなぁ」と思うような、話し方も表情も、しばらくご無沙汰でした。
大学時代にサークルで知り合ってから、ずっと一緒でした。大学2年の時に学内のミスコンに、エントリーされた事だけが妻の唯一の自慢だそうです(あくまでもエントリーしただけなのですが…) でも、私にとっては一番かわいい女性でした。子供に恵まれなかった事もあり、妻への愛しさは昔と変わらないのです。
妻を近くのファミレスに誘いました。まだ先が真っ暗な事には変わりないのですが、とりあえずの金策ができた事で少し気持ちが楽になっていました。
お昼をだいぶ過ぎ、遅めのランチを妻ととっていました。
そこに妻の携帯が鳴り、妻は慌てた様子で「ちょっとごめん」と、出入口の方に歩いて行きます。姿は見えなくなりました。
10分くらい経ったと思います。妻が戻って来ました。心なしか、電話に立つ前より疲れた表情をしていました。私は心配になり、「どうしたの?」と声を掛けると、急に笑顔を作った妻は、叔父が残りの金を用意したから取りに来いと言っているので、私が行ってくるね…と言います。
予想以上に早く金を用意してくれた事のお礼も言わなければならないし、私が叔父の家に行くと言いましたが、妻は「あなたは会社でやる事がいっぱいでしょ?いいの、私が行くから…」と、言い終わらないうちに立ち上がり、出入口の方に向かってしまいました。
私は一人残って飲みかけのコーヒーを飲み干し、会社へ戻りました。
今から考えれば、その時点で不自然な点や、不審な点はありました。叔父から妻への直接の電話、私に有無を言わさないような態度で、一人叔父の家へ赴く妻…でも、その時は「金策」それしか考えられませんでした。
私は会社に戻り、残務処理に加えてその日の朝、急に辞表を出した従業員に代わって工場の機械も稼働させなければなりませんでした。
一段落つくと時計は夕方6時をまわっていました。私はまだ妻が帰って来ず、連絡すら無い事にやっと気付きました。
妻の携帯を鳴らします…何コールしても出る気配は無く、心配になり叔父の自宅に電話を掛けてみました。数コールの後、留守電になってしまいました。
なにかあったのか…漠然とした不安がよぎり、私は迎えに行こうと車に乗り込みました。
その時、私の携帯が鳴り妻からの着信があったのです。
「どうした!?」と問う私に、妻は「どうもしないよ…お金受け取ったから、今帰るね。先に家に帰ってて。」と、冷めたような、気の抜けたような声で答えるのでした。そんな妻の声を聞いたのは、結婚生活の中でその時が初めてだったと思います…
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